【書評】現代の多忙な管理職の実態 | 罰ゲーム化する管理職

現代の管理職は、組織のフラット化により負担が高いにもかかわらず、賃金がメンバー職と格差が少なく報われない。また、近年のパラハラ対応や働き方た改革の煽りを受けておりさらに問題が複雑化している。本書はそのような罰ゲーム化している管理職の現状に関して、データを使って可視化をしたという点で意義深い。解決策の提案につながる論理展開に「ん?」というところがあるが、それを差し引いても管理職の実態について豊富なデータを提供してくれて参考になることが多い。

以下のような読者にお勧めである。

  • 自分の状況をデータを元に見つめ直したい管理職
  • 管理職になることに不安を感じる非管理職
  • 管理職を取り巻く課題解決に関心のある経営者

参考になった点

  • 人事部と管理職で問題意識のすれ違いがある。管理職は人/時間のリソース不足に問題意識があり、人事部は働き方改革など近年表面化している課題への対応に問題があると思っている。人事部の現状把握不足、サーベイの必要性。
  • 経営層ともジェネレーションギャップがある。経営層は「俺の頃はもっと大変だった」「苦労は進んでしろ」という根性論的意識があるが、今の世代では「なぜこの会社でそこまでしないといけない?」と経営層の言葉が響かない。経営層と管理職のコミュニケーション不足。
  • 管理職と管理監督者は違う。人事権がないのは管理監督者とは言えない。
  • 官僚制にはメリットがある、大量の仕事に対して全体を気にせずに専門領域に集中して効率的に仕事を進められる。官僚制を享受している中で、全体を見て欲しい、経営思考を持てと言うのは矛盾している。これは、部分最適をしている人間が全体を見ないと機能不全になってしまうと言う、敷いている官僚制のシステムに不備があると言っているようなもの、権限の移譲やジョブの分割がうまく行ってないということ。
  • 目標管理はそれが自身のスキルアップとかにつながるという価値観でないと機能しない
  • フォローワーシップ・アプローチの一つとして紹介された、管理職の研修や管理職へ指示していることを部下にも伝えるのは良い試み。管理職のブラックボックス化は、メンバー層の管理職へ昇進意欲の障壁になってると思う。給与とかもよくわからんし。

イマイチな点

  • 4章の修正編で4つの解決アプローチを紹介している。しかし、この4つアプローチが、前述までのどの問題に対するアプローチなのか明確ではない。おそらく、3章までの問題に対する施策を、問題に対する施策をまとめるのではなく、施策の種類別にカテゴライズしてしまっているため、3章までのつながりがわかりづらくなっている。
  • 「ネットワーク・アプローチ」が前述までの問題のどれに対する解決策なのか読み取れない。急に湧いてきたように見える。
  • 「キャリア・アプローチ」は、現在の日本のキャリアアップ方式であるオプトアウト方式の是正を求めるものである。しかし、そもそもオプトアウト方式の強固なデメリットが本文で示されておらず、さらにそれが管理職の負担増にどう繋がっているのか自明ではないため、なぜその是正を施策に持ってくるのか納得感がない。