宇宙状況監視/宇宙交通管理を手がけている企業(2023年版)

近年、スペースデブリ問題や、衛星の大規模コンステレーションの構築により宇宙状況監視(SSA)に対する関心が高まっています。また、2023年6月に改訂された宇宙基本計画では初めて宇宙交通管理(STM)に言及があります。

そこで、この分野の特に民間企業の情勢を把握するために、宇宙状況監視や宇宙交通管理を手がけている企業をまとめてみようと思います。基本的には以下のようなカンファレンスに登壇している企業や、関連している企業を独断と偏見でピックアップしています。SSAというと防衛関連とつながりが強い分野であるため情報を公開していない企業は含まれていません。網羅性については期待しないでください。

www.strausscenter.org

www.iaassconference2023.space-safety.org

NeuraSpace

会社URL:Smarter Space Traffic Management - Neuraspace

SSAを生業にする企業はいくつかあるが、この企業はSTMを中心に据えるポルトガルの企業。特に、機械学習に強みがあり、誤警報の少ないスマートなSTMシステムを目指している。NeuraSpace社では、人工知能を宇宙交通管理の業界に初めて適用した、「機械学習予測プロット」を提供している。「機械学習予測プロット」により、オペレーターは衝突回避行動の準備をする前に、利用可能なデータで進めるか、追加データを待つかを数日早く決定することができる。これにより、貴重な燃料を節約し、不必要なマヌーバーを避けることによって衛星の寿命を延ばすことができる。

credit: NeuraSpace

GMV

会社URL(STM関連記事):Space | GMV

スペインに本社を置き、世界各国に拠点を展開するハイテク企業。宇宙・防衛分野のみならずサイバー、自動車、金融など様々な事業を手掛ける。SSAにおいては90年後半からESAと協力して物体カタログや衝突回避のシステムを構築している。STM分野においては欧州委員会(EUSTMプロジェクト)のSTMガイドラインやベストプラクティス定義のための欧州コンソーシアムを主導するなど、この業界をリードしている。

credit: GMV

Kayhan Space Corp.

会社URL:Making Spaceflight Safer™ - Kayhan Space

衛星運用の自動化を推し進めるアメリカのベンチャー企業。同社の提供するSTMプラットフォームであるPathFinderは、コンジャンクションの評価、衝突回避のためのマニューバー計画作成、宇宙物体のスクリーニングを可能とする。また、2023年のSmall Satellite ConferenceではBenchmark社の衛星運転支援システムであるSmartAIMとの連携を発表し存在感を強めている。

credit: KayhanSpace

ExoAnalytic Solutions

会社URL:ExoAnalytic Solutions – Creative Solutions to Challenging Problems

3人の物理学者が創業を手がけたアメリカの企業。世界最大の光学望遠鏡ネットーワークExoAnalytic Global Telescope Network(EGTN)を提供している。その数は、観測所35以上、望遠鏡350台以上。これらの地上ネットワークの強みを活かして、宇宙物体の監視、アラートの発信、宇宙物体のカタログ提供など様々なSSAソリューションを提供している。

credit: ExoAnalytic Solutions

COMSPOC Corp.

会社URL:COMSPOC - Home

SSAの総合的なプラットフォームを提供するアメリカ合衆国の企業。2014年設立。SSAソフトウェア・スイート(SSS)は、サービス指向アーキテクチャの包括的な宇宙運用センター(SpOC)ソフトウェア・ソリューションです。このアーキテクチャは、スケーラビリティ、信頼性の高いパフォーマンス、完全なデータベース統合、安全な運用、ウェブベースのユーザーインタラクションのために設計されている。SSSはCOMSPOCの運用チームによって使用され、世界中の宇宙業務をサポートしている。

credit: COMSPOC

KBR Inc.

会社URL:KBR | We Deliver

アメリカ合衆国の民間軍需産業企業。宇宙分野では宇宙飛行士の訓練支援や、JWSTの開発等も行っている。SDA情報の収集、分析などのインテリジェンス活動や衛星の追跡監視等の支援をおこなっている。2022年には、宇宙商務省とSSAシステムのパイロットプロジェクトに関する契約も結んでいる。ただし、軍需産業色が強い企業のせいか、具体的なサービスや製品の情報は不透明。

credit: KBR inc.

NorthStar Earth & Space Inc.

会社URL:NORTHSTAR - Empowering humanity to preserve our planet

宇宙から宇宙を監視するという世界初のサービスを提供するカナダの企業。NorthStarは宇宙物体を宇宙から監視するための衛星コンステレーション「skylark」の構築を目指しており、2023年に最初の衛星の打ち上げが予定されている。日本ではAxelspaceがSSAデータを補完するために、自社衛星GRUSの衛星画像を提供することを発表している。また、ExoAnalyticと戦略的コラボレーション契約を結んでおり、ExoAnalyticの光学望遠鏡ネットワークで取得したデータと、NorthStarの衛星コンステレーションで得られたデータを組み合わせたSSAサービスの提供を目指している。

credit: NorthStar

Slingshot Aerospace

会社URL:Slingshot Aerospace - Mission First. Safety Included.

宇宙でのシミュレーションや分析のためのサービスを提供するアメリカ合衆国ベンチャー企業。2017年設立。宇宙状況監分野ではSlingshot Beaconという衛星衝突回避プラットフォームを提供している。Slingshot Beaconは以下のページからユーザ登録をすることで無料版を使用することができる。

slingshotaerospace.com

The Space Data Association

会社URL:Welcome to the Space Data Association - Space Data Association

宇宙環境における安全に関するデータの管理、および効率的な共有をサポートするために衛星オペレータを取りまとめている英国の非営利組織。SDAにはNASAやNOAA、日本ではスカパーJSATが参加している。加盟団体はSDAが提供するSpace Data Centerにデータを提供し、コンジャンクションの評価サービスや、宇宙物体の事業者の情報を得ることで、衛星運用に役立てることができる。

credit: space data association