ニワトリのたまご

宇宙とソフトウェア開発

【書評】AIエージェント 人類と協働する機械

本を読んだきっかけ

今話題のAIエージェントを、どのように有効活用できるのかを学びたいと考えた。 また、著者の広木さんは、これまでの講演で過去の歴史を踏まえた分析や将来への提言を行っている。AIによる技術革新についても、歴史的な観点からの知見が得られるのではないかと思い、本書を手に取った。

著者/本に関する内容

著者は『エンジニアリング組織論』の著者である広木大地さん。 アーキテクチャやエンジニアリングをテーマに、さまざまなカンファレンスで講演している。

内容の要約

AIエージェントの登場によって、仕事はどのように変わるのか。本書は、次の問いに答えながら、これからどのように歩んでいくべきかを提案している。

  • AIによって仕事は奪われるのか
  • AIと協働する時代に、生産性をどう考えるべきか
  • AIが普及した環境で、何を作ることが価値になるのか

新しく知った事例や気づき

過去の歴史やパターンから、今後どのように振る舞うべきかについて、一つの指針を得られた。 過去の技術革新では、仕事の二極化が起きている。高技能者の仕事は技術的に難しく、代替されにくい。低技能者の仕事も、経済的に代替するメリットが小さいため、置き換えられにくい。 一方で、中間技能者の仕事はルーティン化しやすく、経済的効果も大きいため、代替されやすい。そうした中で、優秀な中間技能者は新しい技術領域へとシフトしてきた。 そのため、継続的な学習専門性の向上、あるいは人間的な価値を提供する能力の開発が重要だと理解した。

また、AIによって技術革新のスピードは加速しており、状況は目まぐるしく変化している。このような不確実性の高い状況では、未来を正確に予測するよりも、実験を重ねながら創造していく姿勢が重要だ。 本書で紹介されていたエフェクチュエーションは、不確実な状況下で、手持ちの手段(知識・人脈・資金など)から出発し、行動しながら未来を創造していく思考・行動のプロセスである。この考え方は、今後の仕事の進め方に取り入れていきたいと感じた。

もう一つの学びは、業務効率化を考えるうえで、アムダールの法則を踏まえ、並列化できない業務をどう改善するかが重要だという点である。 AIを導入すれば、コーディングは確実に速くなる。しかし、コーディングが速くなったからといって、開発全体が同じように速くなるとは限らない。 ある工程のボトルネックが解消されると、次のボトルネックは、並列化できない業務へと移動する。例えば、仕様策定やレビューのように、一貫性が求められる作業がそれにあたる。 自分の業務はまさにこの部分に該当するため、ボトルネックになりやすい工程こそ、AIをうまく活用すべきだと考えを改めた。

最後に、本書の中心テーマである知識創造システムの構築について。特に、SECIモデルを意識した知識循環を、AIを使ってどのように実現するかという点が印象に残った。 振り返ると、自社の取り組みは、SECIモデルの循環という観点が不足していたように思う。例えば、障害チケットを管理・分析して品質改善につなげる活動は存在している。しかし、分析のスパンが長く、分析する頃には開発が終盤に差し掛かっていることが多い。 その結果、SECIモデルでいう「内面化」まで十分に回っていない。途中まで循環できているにもかかわらず、素早く内面化できないため、活動の効果を実感しづらい状況になっている。 今後は、SECIモデルを意識し、知識循環のどこが不足しているのかを考えていきたい。また、AIを活用してSECIモデルを自動的に回す知識創造システムを構築できるようにしたい。